ポーラ美術館:シンコペーション 世紀の巨匠たちと現代アート展へ

2019年8月10日から箱根にあるポーラ美術館でスタートしたのが、ポーラ美術館所有の名画と現代アーティストを並べ、共鳴・共振させようという画期的な試みともいえる展示「シンコペーション 世紀の巨匠たちと現代アート展」。

今回は特別に前日にアーティストを招いて行われる特別な発表会にお邪魔させていただきました。現代に生きるアーティストから直接作品をレクチャーしてもらえるという素晴らしい機会でして、より深く作品を知ることができたのでした。

クロード・モネ《睡蓮》(1907)

もともとポーラ美術館が所有する作品は世界的にも有名なものが多く、たとえば今回のシンコペーションの最初に出会う作品「クロード・モネの睡蓮」と円形プールの水面にゆっくりと浮遊する白いボウル同士がぶつかることで偶発的に奏でられる音が印象的なセレスト・ブルシエ=ムジュノの作品を「類似させたモチーフ」として対比させて見せるという。

セレスト・ブルシエ=ムジュノ 《クリナメン v.7》 (2019)
©Céleste Boursier-Mougenot

巨匠の作品と現代アート作品の共通点を観覧者に気付かせるという視点はとても新しくて、楽しい。そして何とも贅沢な体験です。

オリヴァー・ビア《悪魔たち》(部分)
2017年 フォーリンデン美術館蔵(ワッセナー、 オランダ)
©Oliver beer

また美術館所有の東洋陶磁と並べられて展開されるのは、世界中の焼き物ひとつひとつにマイクを仕込み、器にかすかに響く音色をオーケストラのように見立てて即興音楽を作り上げる、オリヴァー・ビアの作品。

©石塚元太郎

もちろん今回の展示では日本の現代アーティストもたくさん参加しており、新しいアーティストを知る機会にもなっている。

ポーラ美術館は長きにわたり、日本の現代アーティストを応援する助成をつづけており、今回はその助成対象であったアーティストも多数参加。実際にアーティスト自身も巨匠の作品と自分の作品とを並べて展示できる機会というのはかなり貴重な経験でとても感激しているという声も。これには私自身も深く納得してしまった。

©渡辺豊

特に圧巻だったのは、渡辺豊氏の膨大なコレクションの中に潜む名画を見つける展示。もともと渡辺豊氏の作品は抽象画と具象画をMIXさせているのが特徴で、作家や登場人物の名前をネットで検索しそのイメージの要素を組み合わせつつ肖像画を描く現代アーティスト。この展示のために50枚以上の作品を準備したというからびっくり。

ちなみに共演しているのはピカソ、セザンヌ、レオナールフジタ!贅沢すぎる!

アリシア・クワデ《まなざしの間に》(2018)
©Alicia kwade

サルバドール・ダリと対比される作品で選ばれたのは、ポーランド出身のアーティストで視界と境界を混乱させながら見る者の知覚を惑わせるアリシア・クワデのまなざしの間に。

鏡を用いることでまるでマジックミラーのようにどこが鏡でどこが道なのかがわからないという不思議な体験ができるようになっている。

アブデルカデル・バンシャンマ 《ボディ・オブ・ゴースト》 (2019)
ギュスターヴ・クールベ 《岩のある風景》
©Abdelkader Benchamma

一面墨絵の部屋に飾られた岩山と写実主義のギュスターヴ・クールベによる西洋画の岩の写真の対比は、同じモチーフを描きながら全く違うアプローチでこのふたつを並べようと思うこと自体が面白い。

プリンツ・ゴラムによるパフォーマンス
©Prinz Gholam

彫刻のポーズをそのまま再現し、表現しようとするプリンツ・ゴラムもまたとてもユニークなアーティスト。普段何気なく鑑賞しているアートのポーズがいかに面白いか、という事実を私たちに教えてくれる。今回の展示ではビデオでプリンツ・ゴラムをみられる。

そしてポーラ美術館の素晴らしい名画も企画展とともに鑑賞できるのが、おすすめポイント。常設展もまた素晴らしいなんて。箱根に行ったら絶対訪れたい美術館です。

ぜひ12月1日まで現代アーティストと巨匠の作品を同時に鑑賞し、新しい視点で楽しむコラボレーションの世界を存分に楽しんでみて。個人的にかなりおすすめ。

 

シンコペーション 世紀の巨匠たちと現代アート
2019年8月10日(土)~12月1日(日)
9:00~17:00(最終入館は16:30)
※会期中無休
ポーラ美術館
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1285
大人1,800円
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